どんな作文でも「ぼくは、(わたしは、)」と書きはじめてしまう子がいます。
または「今日ぼくは、」「昨日わたしは、」のように時間とセットで。
実はこのクセ、作文が苦手な子によくあるクセです。
夏休みの作文のような大作に限らず日記の宿題や授業の感想などでも、「ぼくは、」と書き出してしまう子は大勢います。
私は小学校に勤めていたこともあるのですが、高学年でもかなりの人数が、「ぼくは、」「わたしは、」にとらわれているようでした。
どんな時でもとりあえず「ぼくは、」「わたしは、」と書く。それから、続く内容を考えます。
このクセ、ただでさえ苦手な作文を余計に難しくしてしまいます。
なぜなら「『ぼくは、』に続けられる文を書かなければならない」という制限がかかるためです。
ちょっと試してみて下さい。この連休のことを日記に書くとします。旅行に行ったからそのことを書こう。旅行中のどんな出来事についてどう書くのかはさておき、とりあえず「ぼくは、」と書いてみる。さあ、どうなるでしょうか。
「ぼくは、5月2日に○○に旅行に行きました。」
ほとんど自動的に、こんな文章が生まれると思います。そしてそのあと、旅行について何を書こうかさらに考え、書き足していくことになります。
この後に続く文も考えてみて下さい。できれば、作文が苦手な子どもになったつもりで。
「ぼくは、5月2日に○○に旅行に行きました。行ったのはお父さんとお母さんと弟とぼくで、……」
「ぼくは、5月2日に○○に旅行に行きました。△△がとてもおもしろかったです。なぜなら……」
あまりおもしろい作文にはなりません。(というか、この1文目からおもしろい作文にシフトできる子は、かなり文章能力の高い子です。)
このように、「ぼくは、」の制限の中でスタートしますと、表現の幅がせばめられ、文章に勢いが生まれません。
最初の数行はほとんど自動的に書けたとしても原稿用紙半ばあたりで失速、そして続きを書くのがどうにも難しくなります。
というわけで、お子様が作文に苦労しているという方は、一度、「ぼくは(わたしは)、」や「○月○日、ぼくは(わたしは)、」で書きはじめるクセがないかチェックしてみて下さい。
「『ぼくは、』は禁止!」にしてみると、少し書きやすくなると思いますよ。